浜寺界隈をめぐる今昔和洋建築散走

今回の散走の集合地点は堺市西区役所です。このあたり、以前は和泉の国大鳥郡だった場所です。
元々「さかい」と言えば環濠に囲まれた旧市街を指すもので、そこから出ると堺ではなかったのです。

本日のテーマは「建築」です。

土曜日の朝ということもあり、区役所のロビーは閑散としています。参加者の皆さんと自己紹介などして、早速最初の訪問地、和泉国の一宮大鳥大社に向かいます。
といってもJR阪和線を挟んで反対側、すぐそこです。

大鳥大社に入ると、禰宜(宮司に次ぐ幹部神職)の万力さんにお出迎えいただきました。自転車博物館の散走で訪問することをお伝えしたら、わざわざご案内をしていただくことになったのです。
万力さんからは、神道におけるお祓いについて、特にこの日は「茅の輪くぐり」についてお話を聞かせていただきました。神話の世界から今にいたるたとえ話をまじえて興味深く聞くことができました。
普段何気なくお参りしている神社の見方が変わる瞬間でした。その後境内をご案内いただき、社殿についてもご説明いただきました。
本殿の屋根に空に突き出ているX状の部材を千木(ちぎ)と言いますが、その端が垂直に切られたものを外削ぎ、水平に切られたものを内削ぎと言い、それぞれ男神女神どちらを祀っているかを表しているそう。ちなみに大鳥大社は日本武尊(ヤマトタケル)を祀っているので外削ぎです。間に渡してある堅魚木(かつおぎ)も奇数が男神偶数が女神とのことでした。この本殿は左右の傾斜面が中央の棟で合わさった切妻屋根です。

本殿の裏手に奥院があります。日本武尊が三重で亡くなった跡、御霊が白鳥となって飛び去り最後に降り立った場所がこの奥院という伝があり、大鳥大社の起源とも言われています。

このような古の物語と、それを今に伝えるしつらえとの不思議な結びつきに心を動かされます。

大鳥大社を後にして浜寺方向に向かいます。程なく次の訪問地「旧福井邸」が見えてきました。

大正から昭和初期にかけて、浜寺公園東側が宅地開発され、大阪財界人の別荘地、その後住宅地として広がります。今回お伺いした福井家住宅は、昭和17年に大阪市内で鋳物問屋を営む福井清二郎氏が隠居所として建築したものです。

現在は「SAKAINOMA HOTEL濵」一棟貸の宿泊施設として使われています。

今回は曽孫の福井清英さんにご案内していただきました。

福井さんは、曾祖父の建てたこの住宅をどうするかといった話になった時に、この建物の持つ価値を後世に残したいと考えたそうです。改修工事でも出来るだけ本来の意匠や和洋の要素を巧みに取り入れた当時の特長を存分に残しています。

たとえば座敷には「源氏香図」をあしらった欄間がしつらえられています。源氏香図とは数種類の香木の香りを聞き分け、その組み合わせを表すために縦線を使った独特の記号が考案されたものですが、それが意匠として使われたようです。とてもモダンで且つ香道の雅な世界観を併せ持つデザインです。

洋室も色漆喰の塗壁から感じられる空気感や観音開きの建具に入る手延べガラスを通してみる庭の風情が何とも言えません。

和洋の要素を巧みに融合した福井家住宅は令和8年4月に登録有形文化財として指定を受けたとのことです。

しっとりとした落ち着きのある福井邸を後に、さらに西に向かい大鳥北濱神社、旧山崎豊子邸に立ち寄りました。

山崎豊子は昭和30年前後からの作家人生をここ浜寺昭和町で過ごしたようです。
大阪船場の出身で当初は上方の人情風俗を描いた作品が多かったものが、次第により広く社会派小説に向かっていきます。数々の名作がここ浜寺昭和町から生まれたとは興味深いですね。

山崎豊子邸からほど近く、やはり登録有形文化財として登録されている近江岸家住宅があります。
1934年に宣教師でもあったアメリカ人建築家のウィリアム・ヴォーリズによって設計されたスパニッシュスタイルの住宅です。白壁とスパニッシュ瓦が特徴的な外観ですが、和の要素も融合された独特の風情を醸しています。
スパニッシュはスペイン風という意味ですが、実はカリフォルニアがもともとスペイン領だったことや南欧風デザインが富裕層の間で人気になり、それが世界的に人気になったとのこと。浜寺界隈にも多くの南欧風住宅が建てられたようです。

最後に旧浜寺駅舎を見学しました。
建築家辰野金吾と片岡安による辰野片岡事務所による設計で15-17世紀に北ヨーロッパで多く作られたハーフティンバー様式が美しいものです。

大鳥大社から旧浜寺公園駅舎まで。わずかな範囲ではありますが、「建築」をテーマに散走しました。
古刹のたたずまい、昭和の面影を残す建築、そして現代の住宅へと時代をたどりながら、自転車でゆっくりと走ることで、このまちの歴史の積み重ねと移り変わりに思いを馳せることができました。
参加者のみなさまお疲れ様でした。

  • 開催日
    2026年6月13日 土曜日
  • 天気
    晴れ/dd>
  • 走行距離
    7km
  • 参加者
    12人+インストラクター3人

バックナンバー

  • Youtube
  • Instagram